「魔界転生」の感想

山田 風太郎 (著)「魔界転生」を読みました。

森宗意軒が編み出した忍法「魔界転生」を使って、天草四郎・宮本武蔵・宝蔵院胤舜・柳生但馬守宗矩などの現世に不満を抱く英傑達が、現世に再生した。
幕府転覆を企む彼ら殺人集団と、柳生十兵衛と十人衆たちが死闘を演じていく。

魔界転生 山田風太郎ベストコレクション【上下 合本版】 (角川文庫)|Amazon

すげー面白かったです。

序盤に悪役達をきちんと描くという、構成が良いと思いましたね。
物語を盛り上げるには、悪役やライバルを魅力的に書く必要があります。
本書では、その描写に上巻の半分弱くらいを使います。
「もう!こんな強い敵にどうやって太刀打ちできるのよー!?」となった状態で、主人公側を読むことになります。
その後の十兵衛がふいに投げつけられた木刀をつかみとるシーンだけで、彼の力量をささっと示すのもアツいです。
一方、登場人物が少なくなってしまう後半は寂しくはあります。

敵方の魔界の剣豪たちとの戦闘は、わりとすぐ決着がつきます。
その点は、直前に「村上海賊の娘」を読んでいたので、なおさら印象的でした。
対戦相手が多いこともあり、この進行で良いと思います。
また、ほとんどの戦闘で十人衆や仲間達のサポートがあります。
そのため、単なる主人公つえーだけの物語ではなくなって、
「次はどうやって戦うのだろう」と思案しながら物語を楽しめます。

「女くじ」というワードは記憶に残りましたね。
著者の肉感的な描写を読みながら、「なにそれー!? しかも、複数のパターンある!?」と。
本書にはエロ・グロ要素が含まれます。

ちょっと調べてみたところ、
「西国三十三所の一番札所から二番札所まで遠すぎ」なのは、ちょっと笑ってしまいました。
「第一番 那智山 青岸渡寺」から「第二番 紀三井山 金剛宝寺」まで、すごい距離があります。
昔の人は、ここを歩いたのか!と。

私は「Fate/stay night」をきっかけに本書の存在を知りました。
それからは、いつか読みたいなと思っていながらも、
なかなか読めずにいましたが、完読できて良かったです。
後世のさまざまなエンタメ作品に影響を与えた本作、おすすめです。


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