「ベストSF2021」の感想

大森 望(編集)「ベストSF2021」を読みました。

おもしろかったです。
とくに、斜線堂有紀本の背骨が最後に残る」と伴名練全てのアイドルが老いない世界」がすき。

あらすじと短評

円城塔「この小説の誕生」

機械翻訳とテーマとした、エッセイみたいなの。

評価:うーん
相変わらず難しい感じ。
わたしの理解力が不足しているためだろうか、
これがなぜ「ベストSF2021」の巻頭にあるのか、まったく分からない。
ただ、この人にしか書けないものだと思う。

柴田勝家「クランツマンの秘仏」

論文形式SF。「信仰が質量をもつ」を研究テーマとしたスウェーデン人の学者の話。

評価:良い
“異常論文"ブームの火付け役だったらしい。

柴田勝家「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」|「2010年代SF傑作選2」の感想

柞刈湯葉「人間たちの話」

地球外生命体について研究する科学者の複雑な家庭事情の話。

評価:いいとおもう

牧野修「馬鹿な奴から死んでいく」

魔術医と魔女の死闘を描く。

評価:いいとおもう
90年代頃のダークファンタジーの雰囲気を感じた。

斜線堂有紀「本の背骨が最後に残る」

紙の書物が禁じられ焼却された国で、物語を記憶して生きる本と旅人のお話。

評価:すごくいい
はじめてこの人の作品を読んだが、人気作家さんになる思った(なおすでに人気)
そういえば、YouTubeの「ほんタメ」の動画で、名前をお見かけしたことがある。

三方行成「どんでんを返却する」

どんでんを返却する話。

評価:まあ
いっつもこんな感じのやつ書いてるね、という印象。

三方行成「流れよわが涙、と孔明は言った」|「2010年代SF傑作選2」の感想

伴名練「全てのアイドルが老いない世界」

人間を魅了し生気を吸うことで老いないアイドルたちのお話。

評価:すごくすき

こういうのでいいんだよこういうので。
えー、作者は天才です。
終盤、真凜が「献身的な少女」のレッテルを必死に拒み主張するシーンを「そうだよね。そうこなくっちゃね!」と思いながら読みました。

作中に登場する楽曲名が女性SF作家の作品に由来するらしい。知らんかった。

「なめらかな世界と、その敵」の感想

勝山海百合「あれは真珠というものかしら」

「未来の学校」をテーマとしたコンテストの最高賞である本作。

評価:すごくいい
出会いと別れのある「学校」や「伊勢物語」という要素を含みつつ宇宙へとつながる、情緒ある作品。

麦原遼「それでもわたしは永遠に働きたい」

ジムで運動している間に脳のリソースを提供する「朗働」にのめりこむ主人公のお話。

評価:うーん
共感もできないし、ちょっとよくわからなかった。

藤野可織「いつかたったひとつの最高のかばんで」

女性が、いつかたったひとつの最高のかばんと出会い、失踪する話。

評価:あり

堀晃「循環」

紡績会社の会社員とSF作家の二足のわらじを履いて生きた作者の半自伝的大阪小説。

評価:あり

気になる本・読みたい本

  • べストSF2020
  • べストSF2022
  • 現代の小説2021 短篇ベストコレクション
    伴名 練「白萩家食卓眺望」目当て
  • 斜線堂有紀
    巻末に記載されているため。
    • 楽園とは探偵の不在なり
    • 君の地球が平らになりますように
    • 愛じゃないならこれは何
    • 私が大好きな小説家を殺すまで
    • 夏の終わりに君が死ねば完璧だったから
    • 恋に至る病
  • 菅浩江
    巻末に記載されているため。また、何度か作品名を目にしているため。
    • 永遠の森 博物館惑星
    • 不見の月 博物館惑星II
    • 歓喜の歌 博物館惑星III

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