「元彼の遺言状」の感想

「元彼の遺言状」を読みました。
作者:新川帆立
発行:2021年

まあまあおもしろかったです。

良く言えば、がめつくて性格がキツい主人公として剣持麗子のキャラが立っていた。
悪く言えば、主人公視点での男性に対するレッテル付けが少々キツかった。
もちろん主人公は女性に対してもキツく当たるところはあったけれど、
それは個人に対してのキツさにすぎなかったと思う。
一方男性に対しては、対象が個人だけではなく、他の男性を含めた全体口撃にまで発展していた。
例を挙げると、
「男とは過去のアレコレを女に聞かせたがる生き物」とか、
「男は元カノを永久保存する」とか。
これらの考えはあくまで主人公の剣持麗子の個性だとは思うが、もしかしたら作者から滲み出たものが多分に含まれるかもしれない。
それを確認するには作者の他の作品を読めばわかると思うけれど、しかしそれをするにはやや億劫かな。
なんだか不満ばかり多くなったけれど、同種の不快感としては「あのこは貴族」ほどではない。
あくまで、キャラ立ちがしっかりしている小説の副作用だろう、たぶん。
それにしても男性陣は大抵どこか情けない人ばかりだったように思う。
浮気する人、ナルシスト、なんちゃってYouTuber、過去のマドンナのことを引きずっている人、妻とうまくいっていない人など。
それも主人公のキツさを際立たせるための材料だったのだろう、たぶん。

序盤だけは文体の周波数がなかなか合わずに、やや苦戦した。
中盤終盤は気にならなくなった。

作者のことを知ったきっかけは「有隣堂しか知らない世界」だったと思う。
話し方から賢そうな感じがにじみ出ていたという印象。


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