「ハーモニー」の感想
伊藤 計劃 (著)「ハーモニー」を読みました。
おもしろかったです。
「ハーモニー」では、「虐殺器官」の後の世界を描いています。
そのため、テーマとして「テロとの戦い」は引き続き存在すると思います。
そして、そこに「病」が加わっている印象を受けました。
「虐殺器官」の巻末の解説によると、著者はガンの治療のために入院し、病室で「ハーモニー」と書き始めたらしい。
きっとその影響はあるのだろう。
文字について。
終盤に語られる御冷ミァハのことばとして、以下のものがあります。
文字は残る。もしかしたら永遠に。永遠に近いところまで。
(325ページ)
これはミァハの境地でもあり、それと同時に、著者の著作に対する境地や願いでもあるように思えました。
また、本書の文章が「ETML (Emotion-in-Text Markup Language)」という記述言語で記述され、後世に残った文字になっているという仕掛けも、うまい。
後世に文字を残すことに対する著者の強い思いを感じました。
備忘録的あらすじ
21世紀後半の<大災禍>以後、その混沌の反動で、人類が医療福祉厚生を核とした社会を実現する。
その社会では、人々は体内に「WatchMe」を入れて体調を監視し、サーバーからダウンロードした情報をもとに家にあるメディケアが必要な物質を生成することで、だれも病気にならなくなった。
そんな社会に抵抗するために、3人の少女が餓死を試みる。
それから、13年後。
死ぬことができなかった霧慧トァンは、世界保健機構の螺旋監察官として、サハラ砂漠にて停戦監視を行っていた。
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