「息吹」の感想

テッド・チャン (著)「息吹」を読みました。
著者の第2作目のSF作品集。

息吹|Amazon

本書については「人類が直面しうる問題をテーマとしたSF要素をふくむ物語風の哲学書」という印象を受けました。
こういう「人類が直面しうる問題をテーマとしたSF要素をふくむ物語」だからこそ、さまざまなSF賞を受賞するのだろうなと感じました。

著者の第1作目のSF作品集「あなたの人生の物語」もいずれ読んでみようと思います。

本書収録作品のざっくり内容と、その寸評

以下、本書収録作品と、その寸評。

  • 「商人と錬金術師の門」
    ヒューゴー賞、ネビュラ賞、星雲賞受賞
    アラビアン風タイムトラベルのお話。
    門をくぐる方向しだいで未来か過去に行ける。
    未来を知ることはできるが、過去は変えられない。
  • 「息吹」
    ヒューゴー賞、ローカス賞、英国SF協会賞、SFマガジン読者賞受賞
    交換可能な肺の空気と大気との空気圧差を利用して駆動するが故に、閉ざされた空間でいずれ活動停止する宿命を悟る機械生命の解剖学者のお話。
  • 「予期される未来」
    ボタンを押す少し前に発光する予言機。
  • 「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」
    ヒューゴー賞、ローカス賞、星雲賞受賞
    仮想世界でのデジタルペット「ディジエント」にまつわる、AIの成長と愛情のお話。
    収録している他の作品と比べ、とても長い。
    前記3篇を読み終わった勢いそのまま読もうとしたところ、予想外に長く、危うく挫折しかけました。
  • 「デイシー式全自動ナニー」
    親と子守り機械に育てられた子供のお話。
  • 「偽りのない事実、偽りのない気持ち」
    人間の記憶よりも正確な、検索ツールが普及した世界のお話。
  • 「大いなる沈黙」
    絶滅の危機に瀕したプエルトリコのオウムとプエルトリコのアレシボ天文台の「アレシボ・メッセージ」を扱う、知的生命体に関するお話。
  • 「オムファロス」
    神を信仰する考古学者が露天で売られている発掘品をきっかけに、天文学の論文により信仰を揺さぶられる話。
    キリスト教や「若い地球説」という概念などを知らないと話についていけないかもしれない。
    つまり、むずい。
  • 「不安は自由のめまい」
    プリズムという平行世界と交信できる世界での、人の意思決定による分岐とその結果に関するお話。
    プリズムには容量という使用限界がある―現実世界のPCのストレージ容量のように―という点が、特徴的だと思いました。

苦労したこと

このような翻訳ハードSFを読むのははじめてだったので、読むのに結構苦労しました。
それらについても、嘘なく書いておこうと思います。

  • 神や信仰や民族の話題が出てくると、その方面の知識がなく、苦労
  • 登場人物名や組織名で、苦労
    名前から性別を判断できない
    会話について、誰がしゃべっているのかわからなくなる
    誰がどういう人だったかをよく忘れる。カタカナの名前が記憶に定着しない

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