「春期限定いちごタルト事件」の感想
「春期限定いちごタルト事件」を読みました。
作者:米澤穂信
発行:2004年
おもしろかったです。
恋愛関係にも依存関係にもないが互助関係にある高校一年生の小鳩君と小佐内さんによる青春学園ミステリー。
収録作品
- プロローグ
- 羊の着ぐるみ
- For your eyes only
- おいしいココアの作り方
- はらふくるるわざ
- 狐狼の心
- エピローグ
2024年7月にアニメ化されるということで、読もうと思った。
ライトノベルらしい軽快な文体に見える一方で、
漢字や慣用句は普段見かけないような難しいものが随所に使われていた。
「峻厳さ」とか「衆生」とか「玄妙な」とか、挙げていけばキリがない。
普段は難しめな漢字が多いもの(歴史小説など)を読んでいる人が書いたライトノベル、という印象を受けた。
さらには、「淹」の漢字には「ひたす」という意味があるから「ココアを淹れる」という表現は適切ではないと小鳩君が思う場面が描かれていたので、作者は漢字に対して強い関心があるんだと思う。
ミステリーでありながら殺人事件がないのがいい。
各章で基本的に不満がないが、
「For your eyes only」の結末はちょっと残念だった。
絵の存在を忘れてただけなんて。
「おいしいココアの作り方」というタイトルは、
村山由佳の「おいしいコーヒーのいれ方」から持ってきているのかしら。
すこし名前が似ているので、そう思った。
文体について。
会話文の前に「言った」とか「呟いた」とかを記述する形式だった。
誰による会話文なのかがはっきりして、誤読が少ないことがメリットだと思う。
比較的珍しい形式だ。最近読んだものだと「悪童日記」くらいしか思い浮かばない。
誰々が呟いた。
「会話文」
以下のような形式は無かった。と思う。
「会話文」と誰々は呟いた。
シリーズものでありながら、読むべき順番がわかりにくいと思う。
番号付けしてもいいと思う。
ただ、あえてしてないということは、作り手としてはどこから読んでもいいと思っていて、どこから読んでも大丈夫なつくりにしているのかもしれない。
初版発行順は以下の通り。
「巴里マカロンの謎」を読まずに飛ばしてしまう読者もいそう。
- 春期限定いちごタルト事件 高校1年の春
- 夏期限定トロピカルパフェ事件 高校2年の夏
- 秋期限定栗きんとん事件(上下) 高校2年の秋〜高校3年の秋
- 巴里マカロンの謎 番外編。高校1年の秋から冬
- 冬期限定ボンボンショコラ事件 高校3年の冬
2004年発行作品ということもあり、スマホではなく携帯電話が登場する。
アニメ化の際に変わる部分だろう。
どうでもいいことだが、2024年6月18日現在Wikipediaにて最終話のタイトルに誤字がある。
誤:孤狼の心
正:狐狼の心
春期限定いちごタルト事件|Wikipedia
ちなみにこの最終話は、ハリイ・ケメルマンの『九マイルは遠すぎる』(原題: The Nine Mile Walk)のオマージュとのこと。
いつか読むかもしれない、覚えておこう。
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