「新しい世界を生きるための14のSF」の感想
伴名 練(編集)「新しい世界を生きるための14のSF」を読みました。
ほぼすべておもしろかったです。
ただし、本が分厚いので紙の本だと腕がつかれます。。。
収録作品
- 八島游舷「Final Anchors」
- 斜線堂有紀「回樹」
- murashit「点対」
- 宮西建礼「もしもぼくらが生まれていたら」
- 高橋文樹「あなたの空が見たくて」
- 蜂本みさ「冬眠世代」
- 芦沢央「九月某日の誓い」
- 夜来風音「大江戸しんぐらりてい」
- 黒石迩守「くすんだ言語」
- 天沢時生「ショッピング・エクスプロージョン」
- 佐伯真洋「青い瞳がきこえるうちは」
- 麦原遼「それはいきなり繋がった」
- 坂永雄一「無脊椎動物の想像力と創造性について」
- 琴柱遥「夜警」
あらすじと短評
【】で囲われているのがテーマ。
八島游舷「Final Anchors」
車両衝突までの0.488秒で、車両AI同士の最後の審判が行われる話。
【AI】
初出:電子書籍配信/早川書房/2018年刊
評価:よい
斜線堂有紀「回樹」
死者を取り込み、その死者への愛もすり替わる回樹の話。
【愛】
初出:<SFマガジン>2021年2月号/早川書房/2020年刊
評価:よい
murashit「点対」
双子の会話文を並列に記述した小説。
通常の原稿入稿方法では実現できない小説をあつめた同人誌の作品のひとつ。
【実験小説】
初出:『紙魚はまだ死なない リフロー型電子書籍化不可能小説合同誌』
評価:うーん
そういう実験的な小説だということは理解できる。
だがしかし、それでもやっぱり読みづらい。
宮西建礼「もしもぼくらが生まれていたら」
小惑星衝突がせまる中で、高校生たちが衛星構想コンテストの入選を目指す話。
【宇宙】
初出:『宙を数える 書き下ろし宇宙SFアンソロジー』東京創元社編集部/創元SF文庫/2019年刊
評価:よい
高校生たちの会話とは思えないほど、専門的な宇宙の用語が出てくる。
高橋文樹「あなたの空が見たくて」
星海旅行で出会った地球人から、後日今際の際のビデオメッセージを受け取る話。
【異星生物】
初出:『Sci-Fire 2019』(同人誌)2019年刊
評価:まあ
カマキリに寄生するハリガネムシについては、
「ダーウィンが来た!」というTV番組でたまたま見たことがあったので知っていました。
蜂本みさ「冬眠世代」
冬眠をする最後の世代の熊たちの話。
【動物】
初出:オンラインSF誌「Kaguya Planet」2020年
評価:すごくいい
なんともいえないやさしい手触りの小説。
あたたかさと喪失感の読後感。
芦沢央「九月某日の誓い」
奉公先の操様と私との交流を描く。
【超能力】
初出:<小説すばる>2020年5月号/集英社/2020年刊
評価:よい
ところでなんでタイトルが「九月某日の誓い」なんだろう?
夜来風音「大江戸しんぐらりてい」
徳川光圀の命を受けて和歌の研究をするために、算術長屋をつくりあげる話。
【改変歴史】
初出:『月猫通り 2168・69合併号』(同人誌)2020年刊
評価:うーん
興味を持てなかったせいかどうにも目が滑ってしまい、これだけ途中で読むのをやめた。
黒石迩守「くすんだ言語」
言語の壁を突破する過程で生まれた中間言語が、世界を巻き込み父と娘の人生に影響を与える話。
【言語】
初出:『伊藤計劃トリビュート2』早川書房編集部=編/ハヤカワ文庫JA/2017年刊
評価:よい
天沢時生「ショッピング・エクスプロージョン」
増殖する商業施設をめぐる、サイバーパンク冒険活劇。
【環境激変】
初出:<SFマガジン>2022年2月号/早川書房/2021年刊
評価:よい
文体がだいぶファンキーな感じ。
さまざまなサブカルのミームを文章に組み込んでいるので、読んでいてもわからない人もいそう。
佐伯真洋「青い瞳がきこえるうちは」
仮想空間の卓球が発達した日本の兄弟の話。
【VR/AR】
初出:ウェブサイト「note」2020年
評価:よい
麦原遼「それはいきなり繋がった」
ある日こちらの世界が「向こう側」と繋がってしまう話。
【ポストコロナ】
初出:オンラインSF誌「Kaguya Planet」2021年
評価:まあ
坂永雄一「無脊椎動物の想像力と創造性について」
巨大な蜘蛛の巣に京都が支配され、蜘蛛を生み出した葛城と天瀬の話。
【バイオテクノロジー】
初出:『NOVA 2021年夏号』大森望=編/河出文庫/2021年刊
評価:よい
琴柱遥「夜警」
浜辺と灯台と村があるだけの小さな世界。
子どもたちが流れ星に願いごとをすると、その願いが必ず叶う。
【想像力】
初出:ウェブサイト「ゲンロンスクール 超・SF作家育成サイト」2019年
評価:よい
童話的な雰囲気から、SFへとシフトチェンジする。
いったいこれからどうなるのかを明かさない形で最後を迎える。
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