「紙の動物園」の感想
ケン・リュウ(著)「紙の動物園」を読みました。
おもしろかったです。
テッド・チャンよりはだいぶ読みやすい、英語文化圏の中国系SF・ファンタジー小説という印象。
著者は物心付いてからアメリカに移住したらしく、
テッド・チャンと比べると、アメリカ文化での中国人やアジア人という視点で書かれている作品が多い。
収録作品
- 紙の動物園
- もののあはれ
- 月へ
- 結縄(けつじょう)
- 太平洋横断海底トンネル小史
- 潮汐
- 選抜宇宙種族の本づくり習性
- 心智五行
- どこかまったく別な場所でトナカイの大群が
- 円弧(アーク)
- 波
- 1ビットのエラー
- 愛のアルゴリズム
- 文字占い師
- 良い狩りを
あらすじと短評
紙の動物園
アメリカ人の父と、カタログで選ばれた中国人の母と、ぼくの話。
クリスマスギフトの包装紙をつかった折り紙に母さんが息を吹き込むと、動物たちに命が吹き込まれる。
一方、ぼくは母に中国語ではなく英語で話すようにせまる。
評価:すばらしい
すばらしいが、登場人物の病気や死を作品の盛り上がりに利用する点は気になる。
もののあはれ
地球脱出船に乗り込んだ最後の日本人が、船の太陽帆の穴を修復する話。
評価:まあまあ
日本人が主人公の話があるとは思っていなかった。
月へ
中国系移民と弁護士の話。
評価:まあまあ
結縄(けつじょう)
結縄文字と結縄本を伝承する民族とそのノウハウを利用する科学者の話。
評価:うーん
予想外の終わり方をして、びっくり。
太平洋横断海底トンネル小史
太平洋横断海底トンネルの労働者の話。
評価:まあまあ
潮汐
海面に沈む世界で、塔に住む父娘の話。
ショートショート。
評価:まあまあ
選抜宇宙種族の本づくり習性
いろいろな宇宙種族の本づくりの話。
評価:うーん
テッド・チャンの「息吹」っぽい。
心智五行
未開惑星漂着系SFラブストーリー。
評価:いい
腸内フローラを管理して調子を整えることが、ラブストーリーに関係するのは見事だと思った。
どこかまったく別な場所でトナカイの大群が
シンギュラリティ以降の家族の話。
評価:うーん
円弧(アーク)
長命化技術により長寿になった女性の生涯の話。
「不死」をテーマにした作品の地球編。
評価:まあまあ
波
「不死」をテーマにした作品の宇宙編。
評価:うーん
1ビットのエラー
エラーと信仰の話。
評価:うーん
愛のアルゴリズム
子供を亡くした母が自動人形を作る話
評価:うーん
文字占い師
台湾に移住してきた主人公一家と、老人と少年との交流の話。
評価:まあまあ
よいとは思ったが、最後登場人物の死を作品の盛り上がりに使っていてすこし残念。
良い狩りを
妖狐の娘と妖怪退治師のぼくとの交流の話。
評価:よい
作品の中盤以降、予想外の転調をみせる作品。
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